さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
ぽかぽかの陽気に誘われるように、
道端に赤や黄色のかわいい花たちが群れ咲いて踊っている。
昼の休憩を取るために、街道沿いの原っぱに陣をはった一行は、
出発した時と全く同じ人数だ。
もちろん兵士の格好も、どんな小さな違いも見て取れない。
ただ、服の中身が一人残らず入れ替わっているだけだ。
レイラは、目立って嫌でもすぐ目に入る人物に軽く足を引きづりながら近寄った。
「あの、今朝はすみませんでした」
もう何度目かになる謝罪の言葉を、銀色の髪に告げる。
灰銀の瞳は、怖くて直視できない。
「もういい」
朝と同じ言葉を返された。
朝早くに出立を予定していた彼らの行程は、最も重要な人物の疲労、
つまりレイラの朝寝坊のせいで、ずいぶんと遅れ気味だった。