さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
砂利道に短い影を落としながら、車輪が軽やかに回っている。
馬車の前後左右を囲むようにして、騎乗した兵士が油断なく目を走らせる。
レイラの着替えが済んですぐ、一行はリア国の王城目指して出発した。
走り出してすぐに速度を増す。
がたごとと揺れる馬車の振動で、レイラは遅れを取り戻そうとしているのだと察した。
しかし、左右に振られる体以上に、
レイラの体内は破裂しそうなほどどくどくと脈打っていた。
・・ほんと、ドジばっかり。
自分の太ももをまじまじと見つめる深い灰銀の瞳を思い出し、
レイラは手足をばたつかせる。
場所が場所だけに、家族以外の誰にも見せたことのないあざ。
それを、ああも近いところで堂々公表してしまうとは。
恥ずかしさに身じろいで、自分の軽率さを反省していると、
父であるミゲルの言葉が、記憶の沼から明確な姿を持って浮かび上がった。