さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
短くなる呼吸を整えて、応じる。
失敗は許されない。
「はい。私がジマールの娘、レイラでございます。
国王様には、初めてお目にかかります。
私のようなものを城へお呼びいただき、光栄でございます」
かすれてしまったが、震えはしなかった。
声を出したことで、レイラの緊張がわずかにほぐれる。
どうか、このままうまくいきますように、と祈るが、
王ジウチの返事は、レイラの心臓を凍らせるようなものだった。
「ふん、呼んだのはもう三ヶ月以上も前のことだ。
これだけじらしたうえに、このような遅い時刻にやってきて詫びもないとは、
このわしに、反抗の意でもあるのか!」
思いもよらぬジウチの怒気に、レイラは声も出せない。
到着が遅れたので、次の日に謁見をと申し出たのを、
王がぜひ会いたいというので、この場を設けたと聞かされていたのだ。