さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
震える膝はそのままに、肺に溜まった空気をなんとか吐き出す。
「申し訳ございません。
田舎者で不調法でございました。
決して他意があってのことではございません。
どうか、お許しください」
ジマールの屋敷で習ったとおり、自分の身を卑下して侘びを伝える。
ここで彼の怒りをとかなければ、家族はどうなってしまうのか。
下げた頭をますます低くして、レイラはぎゅっと目を閉じた。
自分の心臓の音さえも部屋中に響きそうな静けさの中で、
さらり、と衣擦れの音がする。
「父上。そのようにかわいらしい姫君をいじめるのは、おやめください。
それよりも、まず私を紹介してくださらないと」
王を父と呼んだその男は、レイラの両手を取ると、優しく声をかけた。
「初めまして。ソリャンと申します。
さぁ、あなたの夫に顔を見せてくださいませんか?」