さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
格子のはまった窓の向こうは、大きな一枚の紙をピリピリと破ったようなちぎれ雲だ。
肌の露出した地面には、乾燥に強い雑草が横へ横へと張り出している。
その先にある大人の男の背の倍ほどありそうな高さの塀が、
外界と自分たちを隔てる第2の扉だ。
「どうだ?」
「難しいわね」
カマラはため息をつくと、自分が台代わりにしていた父の背からおりて、
ため息を漏らした。
明り取りの窓は一箇所だけ。
カマラの身長よりも少しだけ高い位置にある。
大きさは、細身のカマラでも通れるか微妙な大きさだ。
格子をはずして外へ出られたとしても、
その向こうにある塀を乗り越えるのは容易なことではなさそうだ。
「私がこんな怪我さえしなければ」
ミゲルは自分の膝を両手でパシンと叩いた。
折れた足はだいぶ良くなっていたが、支えがなくては歩くこともままならない。