さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「父さん。やはり兵士に鍵を開けさせて、正面から逃げる算段をしましょう。
リュートとホックは、私たちがいた元の牢屋にいるみたいだから、
まずは彼らを助け出し、それからレイラのところへ」
頭の中で何度も逃げる筋道を考えてみた。
しかし、そのどれもがミゲルに納得のいく答えをよこしてはくれない。
「カマラ」
ミゲルはすすけた娘の長い髪を一撫でし、力強く呼びかけた。
カマラの肩を力いっぱい抱きしめる。
わずかに伏せた瞳は、次の瞬間、獰猛な野獣のように輝いた。
「お前一人で逃げろ」
「何を言って!」
「黙って私の話を聞け!」
それは、父としてではなく、
一団の指揮官としての命令。
「私の足では逃げるのは無理だ。お前が行くんだ」