【短】偽りのチョコ
「予感的中…」

車の中で、あたしは呟いた

アパートの前に停まっている車に向かって、リムジンを降りた勇汰が蹴りを入れた

「しゃ…社長に電話をっ」

いきなり車を壊し始めた勇汰に驚いたスーツの男性が、慌てて携帯に電話して、あいつの父親らしき人に助けを求めていた

どんどんとベコベコになっていく車を見て、勇汰はすごく楽しそうに笑っている

処理…って、修理代を払って昨日の件を謝るんじゃなくて…車を廃車にさせて処分するってことだったのね

サイテーだ

こいつ、何を考えているんだろう

思考回路が全く読めない

「あの…すみません。あいつって、いつもあんなんなんですか?」

あたしは運転手の人に質問した

「はあ…私も数日前に運転手になったばかりなので…」

運転手が、申し訳なさそうに呟く

「お坊ちゃまは、猛獣と一緒ですよ」

助手席に座って、暴れている勇汰を怯えた目で見ているスーツの男が呟いた

猛獣と一緒…

なんか、ちょっと可哀想な気がする

猛獣だなんて、言われたくない…けど、あれじゃあ、言われるか

あたしは窓から、車を傷つける勇汰を見て、ため息をついた

頭がいいのに…やることは子供っぽい

< 14 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop