【短】偽りのチョコ
何なんだ、この父子はっ!

「君、勇汰の彼女?」

「違います」

「そう…残念だな。あいつにも女がいたのかと嬉しかったのに」

「金が欲しいなら、俺の言うことを聞けと言われました」

「いいね、それ。良い落とし文句だ」

は?

勇汰の父親が満足そうに頷く

サイテー親子だ

「そうだ…業者に連絡して、自転車にリボンをつけてあの車の横に置くように指示しないとな」

勇汰の父親が、にこにこと笑いながら、どこかに電話をしていた

勇汰が満足したのか

スタスタと車に戻ってくると、後部座席のドアを開けて、顔をゆがめた

「親父…邪魔だよ」

「あ、おかえり。良い暴れっぷりだな」

「たまにはストレス発散しないと、な。あの中学は息苦しいんだよ」

「は? 中学?」

勇汰とその父親の会話に、あたしは口をはさんでしまった

中学って…こいつ、中学生なの?

「なに? 俺の年も知らないでコクったのかよ」

勇汰が眉をぴくっと動かした

「知らないわよ。お坊ちゃま学校の制服着てたからに決まってんじゃん」

「馬鹿だな。ほんと、馬鹿」

勇汰が呆れたように呟いた

「煩い。金欠だったのよ。昨日まで、名前も知らなかったわよ」

勇汰がクスクスと笑うと、楽しそうな表情になる

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