【短】偽りのチョコ
それから
もう…勇汰には、会えないのだろうか?

お終いなのだろうか?

我儘で、自分勝手で、偉そうなヤツだけど…悪いヤツじゃないってわかったのに

たった2日、あいつに連れ回されただけなのに、胸がモヤモヤした

会えなくなる…そう考えるだけで、胸の奥が痛くなる

あんなヤツに惚れた?

違う…って言いたいところだけど、否定できない

なんか無性に気になるんだよね、あいつの存在が

一度知ってしまうと、離れられなくなる

まるで麻薬みたいだ

あいつの横暴さに…虜になる

あんなふうに言いたいことを言って、暴れたいだけ暴れたら、気持ち良いんだろうなあって考えてる

あたしはいつもの電車に乗って、いつもの場所に目をやった

思わず、笑みが広がる

黒ぶち眼鏡で、漆黒の瞳が…あたしを嬉しくさせた

イヤホンで何かを聞きながら、小難しそうな本を片手に立っていた

小山内 勇汰

お坊ちゃまのくせに、どうして朝は電車に乗っているのだろうか?

朝だって、お抱えの運転手に任せて車で登校すればいいのに

あたしは引き寄せられるかのように、勇汰の横を陣取った

つり革につかまって、勇汰のわき腹に肘を入れる

勇汰の表情が、曇ると、じろっとあたしを睨んだ

「やっぱ馬鹿だろ。それとも三歩進むと、記憶喪失になるのか? せっかく解放してやったのに」

勇汰が、ニヤッと笑う

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