【短】偽りのチョコ
あ…いたいた!
電車でいつも一緒になるくそ真面目そうな男子高生を発見っ
あたしは、背筋をぴんと正してイヤホンで何かを聞きながら、小難しそうな本を読んでいる男子に近づいた
黒縁眼鏡の奥にある漆黒の瞳が、小難しそうな本の文字を追っている
人ごみ中を少しずつ近づいてくあたしには全く気付いていないようだ
毎日毎日、飽きもせず、電車の同じ場所に乗って立っている
制服を乱すこともなく、きっちりと着ている
あたしなんて、ブラウスのボタンは外しているし、リボンは高校指定のじゃないし…スカートの丈も弄っている
あたしとは真反対なヤツ
きっと金も持ってるんだろうなあ
学校がある駅に到着すると、男子高生がくいっと頭をあげて、分厚い本をパタンと閉じた
大勢の人波に合わせて、男子高生は駅のホームに降り立った
あたしも男子高生の隣を陣取ってから、男子高生の袖口を掴んだ
よし! いまだっ
「あのっ」
「はい?」
眼鏡の奥にある切れ長の賢そうな目が、少しだけ見開いた
「これ…受け取ってください」
あたしは小さなチョコの箱を男子高生に渡した
男子高生の視線がチョコとあたしの目を往復すると、スッと受け取ってくれた
「ども」
低い声で礼を告げた彼は、そのままスタスタと駅の階段をのぼっていった
え? それだけ?
もっと嬉しそうな顔とかしなさいよっ!
電車でいつも一緒になるくそ真面目そうな男子高生を発見っ
あたしは、背筋をぴんと正してイヤホンで何かを聞きながら、小難しそうな本を読んでいる男子に近づいた
黒縁眼鏡の奥にある漆黒の瞳が、小難しそうな本の文字を追っている
人ごみ中を少しずつ近づいてくあたしには全く気付いていないようだ
毎日毎日、飽きもせず、電車の同じ場所に乗って立っている
制服を乱すこともなく、きっちりと着ている
あたしなんて、ブラウスのボタンは外しているし、リボンは高校指定のじゃないし…スカートの丈も弄っている
あたしとは真反対なヤツ
きっと金も持ってるんだろうなあ
学校がある駅に到着すると、男子高生がくいっと頭をあげて、分厚い本をパタンと閉じた
大勢の人波に合わせて、男子高生は駅のホームに降り立った
あたしも男子高生の隣を陣取ってから、男子高生の袖口を掴んだ
よし! いまだっ
「あのっ」
「はい?」
眼鏡の奥にある切れ長の賢そうな目が、少しだけ見開いた
「これ…受け取ってください」
あたしは小さなチョコの箱を男子高生に渡した
男子高生の視線がチョコとあたしの目を往復すると、スッと受け取ってくれた
「ども」
低い声で礼を告げた彼は、そのままスタスタと駅の階段をのぼっていった
え? それだけ?
もっと嬉しそうな顔とかしなさいよっ!