【短】偽りのチョコ
カラオケの店の前で、モモの知り合いの大学生が来るのをあたしたちは待っていた

あたしが携帯を弄りながら待っていると、青い車がぴたっと停まると、ひと際明るい声が聞こえた

その声に、モモが反応して車に近づいていく

あれが…モモの友人か

お金は持ってそうだけど、チャラってるなあ

なんかああいう軽そうなのはちょっと好きじゃない

だからってオジサンが好きかって聞かれると…別に好きってわけじゃないけどさあ

なんかエッチ目的っていうのが、ガンガンに伝わってくるヤツってなんか嫌

金目当て近づこうとしているあたしに言われたくないだろうけど、ね

モモが、車の乗っている男たちと楽しそうに笑っていると、ガツンという音があたしの耳に飛び込んできた

は? なに?

「ちょ…くそ餓鬼! 何してんだよっ」

モモと話をしていた男が、車のライトに蹴りを入れている高校生に怒鳴っていた

あたしは顔をあげて、高校生の顔を見て目を大きく開いた

モモの知り合いの男の車に蹴りを入れたのは、今朝チョコをあげたくそ真面目な男子高生だったからだ

「邪魔なんだよ…こんなところに停めやがって」

小難しそうな本を開いたまま、重たそうな鞄を肩にかけている男子高生がむすっとした表情を口を開いた

「ああ? んだよ。前を見て歩いてねえお前のせいだろ」

「前を見ていたから、車を蹴ったんだよ。馬鹿大学生。安い車で女を引っ掛けてる暇があんなら、就職活動の一つでもしてろ」

「くそ餓鬼が偉そうにしてんじゃねえよ」

「餓鬼はそっちだろ」

男子高生の目がちらっとこっちを見て、あたしを睨みつけた

え…な、何よ!

あたしは思わず背筋が凍って、後ずさった
< 6 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop