【短】偽りのチョコ
スゥっと口から息を吸い込んだ男子高生の口が大きく開こうとすると、黒塗りのリムジンがぴたっと男子高生の横に停まってドアがバッと開いた

「勇汰様っ! おやめください」

黒のスーツを着た男が二人がかりで、男子高生の動きを封じた

「ちょ…やめろ。離せよ」

「いけません! これ以上、問題を起こさないでください」

はあ?

スーツの男たちが、必死に男子高生を止めようとしている

何なのよ

「暴れねえよ。離せっつってんだよっ!」

「車にお乗りください」

「わかったよ。乗るから、その女も一緒に車に乗せろ」

黒縁眼鏡がきらっと光ると、あたしを睨んだ

え? は? あたしも?

スーツの男の目があたしに向く

「あの女性ですね」

「ああ。連れていく」

「かしこまりました」

男子高生を掴んでいたスーツの男が一人あたしに近づいてきた

「失礼します」

スーツの男が、あたしを横抱きにするとスタスタと歩いて、リムジンの後部シートに座らせてくれた

え?

「あ…あの…」

「お坊ちゃまの命令ですので」

スーツの男が、ドアから離れていくと続いて、不機嫌な顔をしている男子高生が荒々しく乗ってきた

「もっと奥に行けよっ」

男子高生がむすっとした表情で、足を組んでいると、リムジンのドアが静かにしまった

男子高生が、ちらっとあたしの顔を見ると、制服のポケットからチョコの箱を出して投げつけた

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