【短編】あれもこれも
1週間後。
「はぁ!?」
「だからごめんって」
大声を出して聞き返すあたしの前で手を合わせる吉馬。
「何で!?来週はあたしの誕生日だからって。一緒に過ごす約束してたじゃん!」
あたしは頬を膨らませながら吉馬を睨んだ。
だってこいつ……。
信じられないんだもん。
来週はあたしの誕生日。
だからあたしは一緒に過ごそうって言ったんだ。
「バイトあるかもしんない。って言ってただろ?」
申し訳なさそうにあたしを見下ろしながらそう言う吉馬。
そうは言ってたけどさ?
分からないとは言ってたけど。
だからって彼女の誕生日にバイトを入れる彼氏もどうかと思う!
だって1年に1回しかないんだよ?
なのに……。
お前は彼女の誕生日よりバイトのが大事なんか!?
むぅ……。
あたしは吉馬を睨みつける。
すると吉馬は頭を掻きながら言った。
「ホントごめん。その分前日か次の日に遊ぼうぜ?」
何よそれ……。
前日とか次の日じゃ、意味ないんだってば。
その日じゃなきゃ駄目なんだよ。
「もういい」
「え?」
あたしは頬を膨らませながら俯いて呟いた。
「もういいよ。あたし、夕くんに誕生日誘われてたからそっち行くもん」
そう言うと、吉馬はムッとした顔をする。
あたしは当日に祝ってもらいたいの。
彼氏が駄目なら友達とお祝いするもん。