【短編】あれもこれも
あたしの呼ぶ声に首を傾げる夕くん。
「ありがと……こんなすごい誕生日プレゼント」
そう言ってケーキを口に含んだ。
するとニッコリ笑うと、夕くんはケーキを食べた。
「いえいえ」
微笑みながら目を瞑った。
すると夕くんは残っていたチキンを手にとって食べ始めた。
そしてあたしを見ずに言う。
「そういえばさ」
「ん?」
「この前話してたエッチの話。何か吉馬とあった訳?」
突然吉馬が出てきてあたしは固まった。
すると夕くんはヘラヘラしてたさっきまでと違って真剣な顔であたしを見る。
「今日だって吉馬とじゃなくておれといるし」
そう言って夕くんはソファに寄りかかった。
「何かあったっていうか……。逆に何もなくて……」
ジュースの入ったコップを膝の上に載せてあたしは俯いた。
「何もなさ過ぎて喧嘩した」
「ふーん」
あたしの答えに顔色ひとつ変えずに夕くんはあたしの顔を覗き込んできた。
その距離はいつもより近くてあたしは顔を引っ込める。
「のんちゃんは吉馬としたいの?」
「え?」
「だってそういう事じゃないの?吉馬が手出してこないからでしょ?」
そうなのかな?
「別にしたいんじゃなくてね?ただ……好きだいてくれる証拠がほしかったの」