【短編】あれもこれも


「おれさ……」


「ん?」


しばらくして口を開いた夕くん。
俯いているからあたしは首を傾げた。


「おれ……こうやっていろんな女と平気でできちゃう男だけどさ」


あたしを見て少し頬を赤らめた。


「好きな女とエッチするのに……3ヵ月かかった」


「え?」


3ヵ月?
この……夕くんが?


キョトンとしていると、夕くんは恥ずかしそうに呟いた。


「いざ本気で好きになると、手出せないんだよね」


「夕くん……」


「だからさ。吉馬もそういうやつなんじゃないの?」


「え……」


「吉馬ものんちゃんの事大切に思ってるから手出さないんじゃねぇの?」


そうだったのかな。
でも……夕くんの話を聞いてあたしはそれを何となく受け入れる事ができた。
あたし……我が儘だったよね。
自分の事ばっか考えて。
誕生日にバイト入った事謝ってくれたのに。
一方的にキレて、ほったらかして夕くんと遊んで。
悪いのはあたしの方だった。
謝るのはあたしの方だった。


俯いていると、夕くんは自分のズボンのポケットから携帯を取り出して電話をかけ始めた。


「夕くん?」


そう呼んだと同時に電話の相手は出たらしく夕くんは口を開く。


「あ、吉馬?」


!!?



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