【短編】あれもこれも
電話の相手の名前を聞いてあたしは目を見開いた。
すると笑いながら夕くんは言う。
「今日のんちゃんと一緒にいるの知ってるよな?おれ……今からマジでのんちゃんとヤるよ?」
はぁ!!?
ちょっと何言ってんの!?
「あ?ふざけんな?じゃぁ止めに来いよ。いつもの店にいっから。じゃね」
そう言って電話を切る夕くん。
あたしは夕くんの言葉にもう言葉が出なくて、口をパクパクとしていた。
「ちょっと!!吉馬になんて事言うのよ!!」
立ち上がってあたしは夕くんを見下ろして怒鳴った。
すると夕くんは興味なさそうに言った。
「これ以上ヤる気のない女といてもつまーんないもーん」
だからって……。
こんな仕打ちあり??
夕くんを睨みつけていると、バン!!と扉が開いた。
その音にビクッとしていると、扉の前で息を切らした、バイト先の服装のままで吉馬が現れた。
「はぁ……はぁ……」
「え、あ……」
息を切らした吉馬があたしを無言で見つめる。
どうしよう!?
何て言ったらいいの!?
そうパニくってた時。
ギュ……。
あたしは吉馬に抱きしめられた。
するとまだ息の荒い吉馬は小さな声で呟いた。
「……ごめん」
「え……ぁ。い、いいよ気にしてないから!!」