《GL》握る、手。
握る、手。
「ヒナちゃん、手繋ごう?」

ヒナこと日向優季《ひなたゆうき》は目を見張った。高校生になった今でも、手を繋いで登校したいとせがむ彼女の意図が解らない。一時期手を繋いで登校をしていたこともあったが、それは小学校低学年までである。それ以来手を繋ぐなんてことはなかった。それなのに――何故だろうか。

「ヒナちゃん?」

応答がない日向を見据えながら高木葵《たかぎあおい》は首を傾げる。

「あー……、の、なんで?」

マンションロビーの待ち合わせ場所に来たのがまずかったのか。何時ものように何時もの時間に来た高木の様子は昨日と同じ。なんにも変わらない。

「繋ぎたいから。他に理由なんてないよ」

さらりと紡がれる言葉は、柔らかい声には似合わない。

「嫌? ヒナちゃんは、わたしのこと嫌い?」
「そんなこと、ないよ……」

日向は目を逸らしてしまう。潤む瞳と口に手を添えている高木の姿が眩しくて直視出来ないからである。

「っ……やっぱりヒナちゃんはわたしのことが嫌いなんだっ」

ぶわりと溢れ出した涙は高木の頬を濡らす。

「違うからっ! 嫌いじゃないよ。葵のことは好きだよっ! だからっ」
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