《GL》握る、手。
【白詰草の冠を。】
※サイトブログからの転載。

◎日向と葵の保育園の頃


【白詰草の冠を。】


保育園の園舎に隣接する公園の一角には、白詰草が咲き誇っていた。白詰草の脇には葉が――クローバーが点在し、時々、四葉のクローバーを探す子供もいる。

「ヒナちゃんっ、こっち」

「あおちゃん、なにするのー?」

日向優季と高木葵は保育園が終われば、この公園で遊んでいた。遊具は割かし少ないが、それでも子供には十分かもしれない。

「今日はかんむり作るのー」

「かんむり? お花のっ!」

「一緒につくろっ」

「うん。一緒にしよー」

座り込めば、クローバーがチクチクと素肌に刺さる。痛くはないのでそのままだ。

「んしょ。こっちも、あれもー」

「ヒナちゃん、これも、こっちも」

二人は一所懸命周りに咲く白詰草を摘み、花冠を作る。白詰草を重ね、茎を回りに巻いて、巻き終わればまた白詰草を重ねて、また茎を回りに巻く。単純作業を繰り返す間、沈黙が続いた。十数分の沈黙を破ったのは日向で。

「できたー! 見て見てあおちゃん」

出来上がった冠を高木に見せ、頭に乗せる。冠は頭より一回り小さかった。

「わたしもー、見てヒナちゃん」

高木も出来上がった冠を日向に見せてそれを頭に被せた。高木のそれは頭より一回り大きい。

「わぁー、あおちゃん可愛いねぇ。お姫様みたい」

その言葉に高木は頬を染め、冠を頭から外す。

「あおちゃん?」

「ヒナちゃんのかんむりちょーだい。替わりに、わたしのあげるね」

「でも、お姫様みたいにならないよ?」

「いーよ。お姫様みたいにならなくても。ヒナちゃんがお姫様だもん」

日向は一度首を傾げ、次いで頷いた。

「あおちゃんがお姫様だよ」

にこにこと笑う日向の頭から冠を取って、高木は自身の冠を被せる。

「ヒナちゃん可愛い」

「本当?」

「一緒だね」

日向の言葉に頷いて、高木は日向の冠を頭に乗せた。

「うん! 一緒っ」

白詰草の冠を眺めながら、どちらかともなく二人は笑いあった。

end.
10年3月6日


オチはどこだ!?
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