ハニードハニー
 一向に止む気配がない悲鳴の中、学園の王子は私の方に向き直った。


「その持ってるのは遅刻届けだよね?」

「……はい」

「ちょうど生徒会室に行くところだったんだ。一緒に行こうか」

「……。はい」


 彼はそう言うと歩き始めてそっと私に手を差しのべた。

 ここは手を握り返した方がいいのか。

 そこで無意識に伸びていた自分の手に気付き慌てて引き戻す。

 だけどそれは彼が笑ってしまったことによって実現できなかった。

 その笑顔に私が引き戻されてしまうのはいつものこと。
< 16 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop