ハニードハニー
 私に向き直ることもなく、平野さんは窓から見える景色を眺めながらそう告げた。


「あれ、違うの?」

「っ……いいえ。そうです」


 この曲は紛れもない失恋した人の歌。

 的確に言われた言葉に一瞬つまった。

 平野さんには分かってしまった、彼には。


「えっとこの曲は、憧れの人に叶わない恋心を抱いている人の気持ちを書いた歌なんです」


 私は自分の『色』が嫌いだったのに彼は好きだと言ってくれた。

 その柔らかい『色』に惹かれたのは私。

 彼は笑って自分の『色』を大切にしなさいと言った。


「結局彼の色に染まることなく堕ちたのは『私』だけだったっていう失恋ソングなんです」


 どうして彼はあんなにも輝かしく笑うのだろうか。

 その視線の先に見える景色は何色なんだろうか。

 私は今でも真っ白のまま。
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