ハニードハニー
 再度社長が私を呼ぶ声で振り返る。


「雛ちゃん、忘れないことね。あなたは『HINA』だっていうことを」

「……。はい、大丈夫です」


 そう言った社長の声は鋭くも優しい声色だった。


 インタビューと言っても毎回同じようなことを聞かれるのは分かっている。

 今日だっていつもとなんら変わらない質問。


「歌手になってよかったことは?」

「学校生活は?」

「休日の過ごし方は?」


 そんなことどうでもいいのに。

 私が自信を持って答えられることはひとつだけ。



「HINAさんにとって歌とはなんですか?」

「私は歌うために生まれてきたんですよ」



 私の歌が彼に届くことがないなんてずっと昔から知ってるよ。
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