ハニードハニー
 その歓声が聞こえているのか聞こえていないのか、平野さんは口を開いた。


「社長さん……でいらっしゃるんですね」

「あら、私のことはエリカって呼んで」

「エリカさんですね。これからよろしくお願いします」


 そう言って社長と平野さんは握手を交わした。

 ……社長が平野さんに触れてる。

 それは一瞬の行為だったけれど、社長と平野さんの手が離れた後も私は社長の手を追っていた。

 視線を上げると社長と目が合った。

 すると社長は私に近づいてくる。


「なあに? 雛ちゃん」

「……いえ、何も」

「そんな怖い顔しなくても大丈夫よ。彼のこと盗ったりしないから」

「なっ、何言ってるんですか!」


 顔が熱くなるのが分かった。
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