ハニードハニー
「そんじゃホームルーム終わり。用がない奴はさっさと帰れ。以上」


　いつも通り鐘が鳴る前に終わる。

　そして一気に騒がしくなる教室内。

　みんな部活に行ったり遊びに行くんだろうな。

　私はこれから仕事。

　今日はレコーディングをしてそれから……。

　……忘れちゃった。

　後で仕事の内容を確認すればいいか。

　教室の前を見ると転校生が教室から出ようとしているところだった。

　あれ、これって追いかけた方がいいのかな？

　だって彼女は社長と一緒に学校に来た訳だから、きっと同じ事務所に所属することになるだろう。

　それにさっきも彼女が車から降りてきた時に一言も会話せず、平野さんに案内されいなくなってしまった。

　挨拶ぐらいしないとね。

　急いでカバンを持ち廊下に出る。

　すると彼女は歩くのが早いのかずいぶん遠くを歩いていた。


「神谷さん！」


　私の声が聞こえたのか彼女はその場で立ち止まった。

　私は走って近づく。


「私、宮下雛。神谷さん女優なんだよね？　私も同じ事務所でHINAって名前で歌手してるの。よろしくね」


　そう言って神谷さんに手を差し出す。

　だがその握手を求めた行為に返事が戻ってくることはなかった。
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