ハニードハニー
「神谷有里。アーティスト名はYUURI。9歳の時に渡米し、12歳にして映画初主演。女優業をこなす傍らモデルとしても活躍。現在はアメリカから日本に拠点を移し活動予定」

「……そんなこと聞いてなあああいっ!」


 レコーディングが半分ほど終わり休憩中、叫んだのは紛れもない私、宮下雛、またの名をHINA。

 持っていた楽譜を机に叩きつけ、目の前にいる人物に指を突きつける。


「どうしてそういう大事なことを教えてくれなかったんですか!?」

「ごめんね。すぐ雛に言おうと思ってたんだけど忘れちゃった」

「笑ってごまかさないで下さいマネージャー!」


 ごめんね、と謝って笑うのは私のマネージャー、柏木悠一。

 柏木さんは私がこの事務所に入った時から専属マネージャーとして私を支えてくれる人。

 優しくて細かいことにも気付くし、とてもお世話になっている。

 ただ物忘れが激しいと言うか、どこか抜けてる所があるのが難点。


「それでエリカさんに何か言われたんじゃないんですか?」

「雛は痛いところを突いてくるね」


 笑っている。

 柏木さんはもう少し緊張感を持った方がいいと思う。
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