ハニードハニー
「彼女は幼いころからこの世界にいるから人との付き合いが不器用なところがあるんだ。見せかけの人間関係を作るのも嫌みたいだし」

「それは私とは人間関係を築くのが嫌だってことなんですか」


 少し刺々しい言い方になっただろうか。

 彼の眼はいつもわたしのことを見てくれている。

 マネージャーとして支えてくれている彼が、私を不安な気持ちにすることはない。

 だからかは分からないが、彼の言葉にはいつも正解しかない。


「彼女は不器用だから……。もっと話しかけてあげてね」


 それはどう言う意味だろうか。


「彼女のこと、もっと知りたいんです」

「うん、すごくいいことだと思うよ」

「それで彼女にも私のこともっと知ってもらいたいんです」


 柏木さんがゆっくりと立つ。

 自分のカバンから何かを取り出すと私に渡してきた。
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