ハニードハニー
「よかった。あなた名前は?」

「宮下雛です」

「……雛ちゃん、いい返事を待っているわ」


 彼女はそう言い残して高級車に乗り込むと、運転手に合図を送りそのまま発進してしまった。


「綺麗な人だったなあ……。大人の女性って感じ」


 そう思って自分の制服姿を見たら虚しくなった。

 どうせ色気も何もないですよ。


 車を見届けると急いで家に帰った。

 そして私は家族に相談する訳でもなく自分の部屋に駆け込むと、真っ先にある人へ電話をかけた。

 機械的な呼び出し音が数回鳴った後、柔らかい声が電話越しに聞こえた。


『もしもし』


 その当たり前な行為に酷く安心した。
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