ハニードハニー
 お代わりを注文していなくてもオーナーのミハエルさんは追加のコーヒーを持ってきた。

 ご丁寧にふたつ。


「HINAって……どういうこと?」


 久しぶりにでた声は少し渇いた声だった。

 神谷さんは私に視線を合わせると、話始めた。


「私はアメリカで活動している頃、日本のことなんて少しも気にしたことなかった。私のライバルはアメリカのスター達、そう思うことでモデル業も女優業も誰にも負けないくらい働いたわ。ただそのうち気づくの、自分は何のために仕事をしているのかっていううことを」


 こんなに長く話している彼女を見るのは初めてだ。

 その視線は間違いなく『私』に向いていた。


「しばらく仕事をしていない時期もあった。学校にも行かず、何もしていない時期があった。毎日家にいてひたすら映画やドラマや雑誌やパソコンに向かってたわ。その時にたまたまHINAの歌を聞いたのよ」

「私の歌?」

「久しぶりに聞いた日本語の歌。なぜか分からないけどHINAの声にすごく惹かれた。同じ日本人、同じ年齢、日本にも魅力を感じる人物がいることを知った瞬間だった。それからは前のように仕事するようになったわ」
< 77 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop