ハニードハニー
「間違いだったってどういうことなの?」

「私の中のHINAは完璧なものだったの。その歌声から触れてはいけないような神秘的なものだった。ただ……実際会ってみるとどこにでもいる女子高生だったわ」


 彼女は嘲笑うかのように言葉を発した。


「はっきり言ってあなたに幻滅したわ。英語も読めない、よく話してよく食べてよく笑って……ただの女の子だったわ」


 私はただの女の子……。

 そんなことは自分でよく分かっている。

 私は歌うことが好きでたまたま社長のエリカさんに拾われた身である。

 歌うことが好き、それだけの理由で今まで歌手活動をしてきた。

 度々、HINAの歌が好き、声が好き、そういってくれる人はいる。

 ただ目の前の彼女は私の歌を聴いて遥々アメリカから自分のポジションを捨て、私に会いに来たと言ったのである。

 彼女の中でHINAは完璧なもの、触れてはいけない神秘的なもの。
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