ハニードハニー
 反応に困った。

 それ以上彼女は言葉を発することを止めたのだ。

 幻滅したと言った。

 彼女の中でそれほど私の存在が大きくなっていたのかと考える。

 それはそれですごく嬉しい。

 私の前では表情一つも変えないこのミステリアスな彼女が私の歌を聴いて会いたかったとさえ言ってくれたのだ。

 少し顔が緩んだ気がした。


「なぜ笑っているの」


 彼女がそう言った。

 やはり顔が緩んだのか。


「神谷さんがやっと私のことを見てくれたんだなって」

「……」


 彼女が怪訝な顔をする。

 ああそうか。

『YUURIとはいつもHINAの話ばかりしてるよ』

 ふといつかの柏木さんが言った言葉を思い出した。

 
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