ハニードハニー
 ふう、とため息なのか一息ついただけなのか彼女が息を吐いた。

 その顔は今までの神谷さんでもなく女優YUURIの顔でもなく、一人の女の子の顔だった。

 少なくとも私にはそう見えた。


「そこまでいうなら私に幻滅されないようにプロとして働くのね。今日からあなたは私のライバルよ」

「ライバル? 友達にはなってくれないの?」

「友達よりライバルのほうが嬉しいでしょ? これから私たちは一緒に働くんだから」

「じゃあ仕事中はライバルで学校では友達ってどう?」


 そういううと彼女はどっちでもいいわと言った。

 嬉しい。

 笑顔が自然とこぼれてくる。

 彼女もまた年相応の笑顔だ。


「それと私のことは有里でいいわ」

「えっいきなりはなんか恥ずかしくて呼べないよ……」

「なに照れてるのよ、友達とか言っておいて。私は遠慮なく雛と呼ぶわ」


 雛と呼ばれたことに少しくすぐったさを覚えた。

 歌手としての私の名前じゃない。
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