ハニードハニー
◇◇◇
「天使ちゃんは帰っちゃったの?」
「これから仕事よ。私もそろそろ行かなくちゃ」
私がいなくなったカフェで神谷さんとオーナーのミハエルさんがカウンターで話をしていた。
「ユーリが気に入る気持ちが分かった気がする。あのCute girlは人を魅了する何かを持ってるね」
「そうね……これから刺激し合える関係になれればいいけど」
「ユーリがそんな顔するなんて久しぶりに見たよ。元気になって帰って来てくれて嬉しいよ」
「ミハエル……余計なことは言わなくていいわ。私は昔の私とは違うの。もう誰にも邪魔されない。ミハエルも早く現実に向き合いなさい」
「そうできたらいいんだけど。君たちにはいつも振り回されているな」
「……。もう仕事に行くわ。ごちそうさま」
「ユーリ。彼女と連絡がついたら教えてくれ」
「……考えておくわ。See you」
彼女がカフェから出て仕事に向かう。
ふいに強い風が吹いた。
その風は酷く冷たく刺さるように痛い。
――誰が予想できただろうか。
これからこの人間関係に、痛々しい程に鋭い棘をもった美しい花が『彼女達』を傷つけることを。
きっとそれは『彼女』しか知らない。