花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~
また、これを考えたのが実の父親などと常識では考えられるはずもないとんでもないものだった。
本気で聞いているのか?
仮に正解を千歳が答えたらどうなるんだ?
と、それはそれで遺恨の残りそうな問題。千歳に答えられる訳がないのだ。
それにそんなもの本当に知らない。あのふわふわとした綿菓子みたいな、まだあどけなさも残る少女にそんなことを聞けるわけがないし……いずれは自然とそんなことを知る日もくるかもしれないが、あくまでそれはまだまだ先のことだと思っているし納得している。
自分と小梅はそこらへんにいくらでも落ちているような手軽な関係とはまた違うのだ。
――遊ばれている。
最近ではすっかりその認識が出来ている。
理事長の興味は実に幅広く。探究心も悪戯心も旺盛。
自分以外に唯一此処に入る用務員は、理事長にとってはその趣味と実益を兼ねた実験の格好の獲物。
きっと今までの用務員の人たちもその被害に辟易して辞めていったに違いないと千歳は確信していた。
だが、千歳はそう簡単に辞める訳にはいかない。
小梅の顔を潰すわけにもいかないし、ここへ来るにあたり、人の良い伯父達に絶対大丈夫だから心配しないでと、大見得をきって出てきたのだ。
今更帰るわけにもいかない。かといってここを出て一人でやっていけるほどの環境と仕事を確保できるとも思えない。
もう、引き下がるわけにはいかないのだ。