花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~
生まれつき優れた運動神経と丈夫な身体に心底感謝する。
高校卒業まであと一年半。理事長の悪行にとことんつきあう覚悟は早い段階で出来ている。これくらいはもう何ともない。
何せ場合によっては一年半といわず先々長い付き合いになるかもしれない相手。
だって千歳は小梅とずっと一緒にいるつもりなのだから……。
自力で大学に行って立派な男になる。そのための資金を貯めるためにも、この高額報酬の仕事を手放すことは出来ない――
用心してトラップを回避するつもりだったのに
「あ……っ」
考え事をしてしまったために気が付くのが遅れた。
壁際の球体からセンサーがあるのを予測して大きく跨いだその先。反対側の壁で何かが赤く発光した。
先に見つけて回避しようとした球体とまったく同じ形状のもの。
「しまった!!」
見落としてまんまとその領域に足を踏み入れてしまった。
千歳は慌てて身を屈めたがそれはなんの役にも立たず、突如として天井に出現した四角い空洞から、物凄い勢いでジェット状の冷たい水が千歳に向かって噴射された。
「いて、いてててっ」
水とはいえこれほどの勢いで叩きつけられると痛い。