花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~
あまりの酷さに疼きだした頭痛に耐えながら、千早に訊ねるも、
「ああ。ない」
やはり覚えが無いという返答が返ってきた。
千早と理事長に何らかの関わりがあるのならもしかしてここに覚えがあるのではないかと思って千早を連れて来たのだが、どうやら千早からその線を確かめるのは無理のようだ。
千早がゴミ捨て場で目を覚ました日と、自分がその日に捨てたもの、小梅と綾人の反応から、ここと何らかの繋がりがあるのではないかと思っていたのだが……全ては推測に過ぎず、ましてや非現実的なことこのうえない推測でもある。
本当に、千早はこことは無関係なのかもしれない。
そもそも、千早はゴミ捨て場で目覚める以前の記憶がないわけだし、目覚めてしばらくは頭がぼーっとしていたとも言っていたし、どちらにせよ明確な手がかりは千早自身から引き出すことが出来そうにもないのだけれど。
これだけ衝撃的で特徴的な場所なだけに、もし来たことがあるのなら、少しは記憶を刺激できるかもしれないと少しだけ思っていた。無駄な徒労に終わったようだが。
「ああ……ったく、少しは片付けろよな」
がっかりした気持ちと、いつにも増して酷い散らかりように感じる苛立ちを、この場にいない相手にぶつけるように吐き捨てて、テーブルに近寄る。
悲しいことにすっかり片付けることが習性と化してしまっている。こんな状況を目の当たりにしてそのままにはして置けない。自然と片付けるべく体が動いてしまう。
「……ん?」