花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~
千早の腕を放しつかつかと綾人に歩み寄ると、千歳は容赦なく綾人の脛を蹴り上げた。
「――って~!!」
油断していた綾人はもろにくらい、痛さのあまりうずくまり、
「小梅ちゃん、千歳っちが暴力を振るう~」
と、小梅に訴えるも、
「今のは綾人さんが悪いです」
小梅はニコリとそれを却下した。そしてその笑顔をそのまま千早に向ける。
「とにかく、もうすぐパパが戻ってくる時間です。ちょっと急いでいきましょう?」
「小梅……約束。やぶったの、怒ってないのか?」
笑顔を向けられ戸惑う千早に、小梅はふふ、と声を漏らして首を横に振った。
「小梅達もいけなかったんです。もっと千早さんの話をちゃんと聞くべきでした。そうですよね、千早さんのことは千早さんが一番わかるのに……千早さんがそうだって認めているのに気休めを言うべきではありませんでした。千早さんは、自分がゴーレムだって……そう思うんですよね」
小梅の問いかけに千早は黙って頷く。
「なら……多分そうなんです。だったら小梅達がすることは決まってます」
そう言うと、小梅は笑顔のまま右手を体の前に持ち上げ、小さく拳を握った。
「パパを糾弾して、きっちり責任を取らせます」