花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~

「う~ん……考えられるのは、実験の最終段階で加賀見君の体の一部。例えば、汗とか血液とか……髪の毛とか、そんなものが混ざってしまった。最終的に取り入れたデータを元にゴーレムが出来上がってしまった……そんなところかなあ」
 そういえば、小梅が読んでくれたあの魔術書のなかにもそれに近いことが書いてあった気がする。ゴーレムの成長具合や造形は、材料に含まれる術者の体の一部が持つ情報や念に左右されると。
 思い返してみると、試験管が割れて燃え上がったときに千歳は少し前髪を焼いてしまった。その燃え滓が、後で掃除した試験管の中身の燃えた煤と混じった可能性は高い。
 ちなみにあの時理事長が試験管の他に無くしたといっていたのは、案の定、ゴーレムを作るために用意した人形だったらしい。一緒に燃えたか、落ちていたのを気付かず千歳がゴミと一緒に掃き集めてしまったのか、そこまではもう確認しようがないが、全ての材料がゴミ袋のなかに詰められうまいこと合成された結果、千早は生まれてしまったらしい。
 千歳の体の情報を元にして千早が生まれたというのなら、似ているのも、意識がぼんやりしている状態で千歳の行動範囲内をうろついていた理由もつく。
 襲い掛かってきたのは、多分、自分が千歳だということだけを自覚していた当時の千早にとって、自分と同じ姿のものへの警戒心からか、自己確立しようと成長をしている段階で千歳の存在を邪魔だと本能的なものが働いたか……そういったところだろうというのも、なんとなく想像はつく。
 けれど……。

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