花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~
「じゃあ、なんで女なんだよ」
そう。それだけが説明がつかない。
「あ~……そうだねえ。加賀見君の情報だけで出来たんなら確かにそこが不思議だよねえ……まあ、彼女を構成する材料には元々私の血液が混ざっているわけだし、私の思考が影響を与えたことも考えられなくはないけれど」
「は? あんたの思考? それがなんで女体に繋がるんだ」
「いや~、ほら。前も言ったでしょ? 君を見ていると初恋の女の子を思い出すって……ほんとに加賀見君はかわいいしねえ。女の子でもおかしくないよなって私は常々思って……がっ……!!」
こんな状況にもかかわらず妄想の世界に入り込み調子良くぺらぺらと喋っていた理事長の声が途中で悲鳴に変わる。奇しくも、その内容のおぞましさに思わず千歳が拳を握ろうとしたのと同じ瞬間。理事長の頭を突如襲ったローファーが見事に命中した。
「いい加減にしてください」
千早と談笑していたはずの小梅が冷たい目線で理事長を射抜いていた。
スカートからまっすぐと伸びた細い足。その片方は靴下だけになっており、履かれているはずの靴の姿が無くなっている。
「あ……う……こ……小梅~」
情けない理事長の声の直後、笑い転げる綾人の声が、研究室に木霊する。
「綾人君まで……」
じとーと情けない眼差しを向ける理事長に、
「いや、龍馬さんが悪いよ~」
ひーひーと笑い転げながら綾人が駄目だしをした。