花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~

 校舎の表玄関から出たので、部屋へ戻るには校舎沿いに校庭の隅を歩いて行かねばならない。
 完全に日が落ちた校庭に人影はなく、校舎のところどころ、僅かについている教室の明かりだけしか光源もない。
 明るかった廊下から暗いところへ出て、まだ目が慣れぬうちに早足で歩こうとしたために、足元の何かに気付かず……つまずき、バランスを崩した。
「――っててて」
 勢いよく前へ転び、したたかに両手と膝を地面で擦り、千歳は顔をしかめた。
 普段だったらつまずいてもこんなに派手にこけることはないのに……やはり相当体調が悪いのだ――と思いつつ立ち上がり、服についた土を払い落としながら、はあ……と長く、重い溜息を吐く。
 今日は本当に厄日としか思えない。
 いや、今日に限らず。最近は本当に色々とついてない気がする。 
「参ったな……もう、勘弁してよ。ほんと、嫌になる……しんどいなあ」
 思わず独り愚痴ったその時だった――





「……そんなに、嫌?」

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