花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~
そっくりな見た目のうえ、着ている物も同じ、この学校の制服。見れば見るほどに区別がつかなくなるのは仕方がないことなのかもしれない。
おろおろとうろたえて千歳ともうひとりの千歳に視線を彷徨わせる綾人。
「いえ……それは、大丈夫じゃないでしょうか?」
そんな綾人を落ち着かせるように小梅が声をあげた。そして小梅は立ったまま硬直している千歳のそばに歩み寄ると、
「ね。ちーちゃん」
千歳の顔を見上げてふわりと笑う。
「小梅……」
内心ホッとした千歳の頬が緩む。そんな千歳を見て綾人も「あ」と小さく一声叫ぶとすぐさま安堵の表情を浮かべた。
「あー。だなだな。そうだよな~……俺が千歳っち間違えるわけないよな!」
嬉しそうにそう言い綾人が千歳に向かい人差し指を立てる。
「その寝癖。うんうん。千歳っちさっきまで寝てたもんな」
言われて綾人の指の先をたどり自分の頭に手をやると、ピンと立ち上がった後頭部の髪の一房が手の平に触れた。
「寝癖で判別かよ……」