花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~
「で? ここから来たと?」
一時間後。一同は校舎裏に来ていた。
お話しましょうという小梅の提案に素直に従った襲撃者に、改めて誰なのかを聞くものの、やはり帰ってくるのは自分は『加賀見千歳』だという台詞で、結局どこの誰なのかの答えは出ないまま。そこで、質問の角度を変えてみたところ、ようやくそれ以外の反応が得られた。
千歳が身に覚えがなかった目撃例。それについて聞いてみたのだ。
見間違いだろうということで流してはいたが、ここ二、三日に立て続けに……しかもどれも綾人と小梅という自分に一番近しいであろう人物が目撃している。そもそも二人が見間違えるほどだ、そうとうに自分に似ていたはずだ。となると、今自分達といるこの襲撃者が一番に怪しい。
「お前なのか?」
千歳の問いに、襲撃者は黙って首を縦に振った。肯定するということか。
「なんでそんなとこにいたんだ?」
「なんで……?」
自分でも変な質問の仕方だったかとは思ったが、他に聞きようが思いつかなかったのでそう訊くと、少し思案するように目を伏せて相手は答えた。
「なんで……何故? そんなこと、分らない……気がついたら、そこにいたんだ。そしてそこにそいつとその人がいたんだ」