花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~
捨てたのはゴミ捨て場が荒らされたのを見つけた日の前日。得体の知れない目の前のもう一人の千歳が怪我をして、そしてゴミ捨て場は散らかっていて……そして綾人がその日の夜にコンビニでこの千歳と会っている。つまりはそういうことだ。この偽者の千歳が最初に気が付いて怪我をした日がその日なのだ。その怪我の原因になった割れ物は何が割れたものだった……?
ゴミ。破れたビニール。紙くず……割れ物。それはもとは一つにまとまっていたものではないだろうか。そこから……出て来た。そこで、目覚めた……。千歳が捨てたもの。それはどこから持ってきたものだったか――
「ちーちゃん?」
どこか焦ったような様子で考え込んだ千歳を心配げに小梅が覗き込む。
――どうしよう。
千歳の頭の中には今、一つの仮定が出来上がっていた。それだって勿論、非現実的なことこの上ないのだが、ドッペルゲンガーや記憶喪失説よりも遥かにその可能性のほうが高い。その存在を、これは何なんだとはっきり説明をする言葉は浮かばないが、少なくとも……大元の原因は誰にあるのかについてはほぼ断言できる自信のようなものはある。
けれど。それを小梅に言っても良いものだろうか。
「うん……?」
おそるおそる、力なく小梅の顔を伺い見る。
「どうした? 千歳っち?」