花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~
「多分……」
溜息とも安堵ともつかぬ息を吐きながら千歳はそれを認めた。百パーセントとは言い切れないが、それでも、かなりの確率でそうだと思う。元凶は多分、理事長の研究にあるのだ。そう言いきれるだけの自信はある――というか、そうとしか思えない。それだけの状況証拠は揃っていると思う。
あの日、研究室で起きた出来事。怪しげな液体の入った試験管を割ってしまったこと……それがどうもこの件に関係しているらしいと思うことを千歳は小梅に説明した。
「ありえるね」
綾人もその推測に同意を見せた。やはり身内は身内。小梅も綾人も理事長の研究狂具合は知らないわけもなく。
「前もなんだっけか、変な生き物みたいなの作った事あったよな~……あれ? 召喚したんだっけか? そういやあの羽根の生えたへんなちっこい猫みたいなやつどうなったっけ~」
「いつのまにか居なくなってましたよね」
綾人は実際に理事長の研究で生まれた妙な生き物らしきものも見たことがあったらしい。そして小梅もそれに当然のように相槌を打っている。
千歳にしてみれば、なんだか自分ひとりやきもきして冷や汗かいて、どうやってごまかそうかと苦心していたのかを思うと、少し馬鹿らしく思えて虚しい気分になりそうでもあったが……とりあえず小梅がショックを受けたりしていないので良しとすることにした。
「……ったく、何考えてるんだ?」
「千歳っちのコピー欲しかったんかね?」
「パパ、ちーちゃんお気に入りだもの」