特別保健委員会
2:保健室の難
「あのっ、ちょ…あ、えーと。」


名前を呼んで引き止めようとするも、残念なことに彼の名前は私の小容量な脳みそのデータベースには登録されていない。
(さっき恐持ての先輩方が、宮崎だか何だか県みたいな名前を呼んでいた気はするけど。)

仕方なく、ずるずると半ば引きずられながら(今日は良く引きずられる日だ)気がつけば、保健室に辿りついた。


中学時代は、妙なトラブルに巻き込まれたり、(今日みたいに)変な地雷を踏む度に担ぎ込まれた保健室。

高校ではお世話になるつもりなんて、なかったのになぁ…。

若干遠い目になりながら、白一色の室内に踏み込んだ。


「ちわー、泉ちゃんー?」


先生は不在なのだろうか。
ドアを開けてすぐにある保健医用教務机には、人影はない。

けれども、彼は、ずかずかと私の腕を引っ張ったまま奥に進む。


と、生徒が休む用であろうベッドが並ぶ一角、唯一引かれていたカーテンが揺れたかと思うと、ぬっと奇抜な色の頭が現れた。
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