特別保健委員会
「保健室は静粛にーって、なんだよ、宮城か。…あー、サッカーボール持ち込むなっつっただろ!」


あ、この人宮城さんって言うのか。(宮崎さんって呼ばなくて良かった!)
それにしても、すごい人、だな。

目の前の男性──幼稚園時が使うクレヨンで書いた太陽みたいな頭の色が印象的な推定25歳前後、をまじまじ見る。

スウェットに白衣を羽織っている辺り、この人が保健医なのだろう。
見すぎていたのだろうか。

ぱちり、視線がぶつかる。
瞬間、にやりと唇の端があがった。

おいおい、と愉しそうに呟いてから、"泉ちゃん"と呼ばれる推定保健医はツカツカと宮城さんに歩みより。

至極愉快そうな表情で、ぽんっ、と彼の両肩を掴んだ。


「なんだ、お前。サッカーボールだけじゃなくて女連れ込むようになるたァー、いい度胸だな。」
「なに言ってんだよ!泉ちゃんじゃあるまいし!」


慌てたように飛びさがる、宮城さん。


「患者だよ、かーんーじゃ!」
「ふーん?」


相変わらずのニヤニヤ顔で呟く先生。
と、それを睨む宮城さん。

二人はしばらく睨みあっていたが(最も睨んだのは宮城さんだけだけど)、ヒラリと先生が離れたことで、ささやかな膠着状態は終了した。
先生の視線は、太陽色の頭を見ていた私に移される。


「ま、いいや。…おい、お前、俺の顔マジマジと見つめる暇があったら、そこに座って、その用紙にクラス番号、氏名。」
「…別に、顔を見ていた訳じゃないですけど。」


いきなり不本意なことを言われて(私はその頭をどうやって染めたのか思案していたんだ)、思わず否定の言葉を呟きながらも、指定されたソファーに座る。

それを見届けて宮城さんは、ようやく私の腕を離した。


「俺、サッカーボールおいてくるから。…泉ちゃん、しっかり仕事しろよ!」
「っんとーに生意気なガキだな、さっさと行け。」
「また、説明しにくるから。」


ひらひらと手を振られ、宮城さんは保健室を後にした。
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