闇のプリンス ~ヴァンパイアと純血の戦士~
そう言って大きな胸に私の顔を埋めたまま動かない。
ちょっと、苦しい!
手足をバタバタさせるが、抱きしめられた状態で身動きが取れない。
ふとルキアの腕の力が抜けて体が離れると、私は息をいっぱい吸い込んだ。
「死ぬかと思った…… 」
いろんな意味で、心臓が止まるかと思った。
「今、そこに気配を感じた 」
ルキアはそう言って、レースのカーテンが付けられているガラス窓を見ていた。
「気配って、ここ2階でしょ? まさか、幽霊とか言わないでよ 」
「そう思っておいて 」
一瞬、ルキアは何かためらったように呟いた。
幽霊やお化けが一番の苦手分野なのに、冗談じゃないよ。
「またからかわないで」と抵抗しようと思ったが、出来なかった。
真剣な目で外を見つめる彼を見て、私は何かただ事ではない空気を感じていた。
自分が思っているよりも、もっと大きな事が待ち受けているような、そんな胸騒ぎがした。