闇のプリンス ~ヴァンパイアと純血の戦士~
次の瞬間、首筋に顔を近付けられ、私は声を失った。
硬直した体に漂ってくる冷たい空気が、私の背筋をぞくっとさせた。
右肩に乗る手がゆっくりと頬へ向いた時、手のひらに黒い影が見えた。
一瞬しか見えなかったけど、それは三日月のタトゥーだった。
手は再び肩へ、そして私の腕を捕らえた。
掴まれた腕は、段々と痺れて麻痺していくように感じた。
何が起こっているのか、どうするすべもなく身動きが取れない。
私は得たいの知れない恐怖に襲われた。
「こら、こんな所で何してるの 」
三上先生の声が聞こえた瞬間、張り詰めていた糸がぷつんと消えた。
自由になった体は力が抜けて、私は床に座り込んだ。
彼は舌打ちをすると、塵のように一瞬にして消えたように見えた。
「廊下を走らないで! 小嶺さん、大丈夫? 」
三上先生はそう体を支えて起こしてくれた。
気のせいか。