闇のプリンス ~ヴァンパイアと純血の戦士~

肩を並べて歩きながら、私は鼻をズルズルとすすった。


こんなかっこ悪い姿、見せたくなかったのにな。


ため息をつきながら、ゴシゴシと目を擦った。



「俺で良ければ、話聞くけど 」



その優しい言葉に、余計に目の前が滲む。



「正直、よく分かんない。 これからどうすればいいのか、何が正しいのか 」



上手く言葉に出来ない。


こんな曖昧なこと言われても、ダークだってきっと困っちゃうよね。



「あの耳飾り、してないんだ 」



ダークが私の耳元を見てそう呟いた。



「実は私、ピアス開けてなくて。 だけど持ち歩いてるよ 」



私は制服のポケットから白い袋を取り出すと、紐を広げて、中からピアスを出した。



「それ、付けてくれない? 」


「え、いいけど今? 」


「今 」


「さっき、ピアス開けてないって話したんだけど...... 」



ダークは私の手からピアスを取ると、右耳にそっと触れた。


痛みはなくて、でもピアスが通り抜けている感覚が伝わってきて、すごく変な感じがした。


「今、何したの? 穴空いたの? 」



耳たぶを触ると、確かにピアスは通っていた。



「これは付けてなきゃ意味がないんだ。役立つ時が、来ないほうがいいんだけど 」



ダークは、そんな意味の分からない事を言って私を見た。









< 117 / 224 >

この作品をシェア

pagetop