闇のプリンス ~ヴァンパイアと純血の戦士~
肩を並べて歩きながら、私は鼻をズルズルとすすった。
こんなかっこ悪い姿、見せたくなかったのにな。
ため息をつきながら、ゴシゴシと目を擦った。
「俺で良ければ、話聞くけど 」
その優しい言葉に、余計に目の前が滲む。
「正直、よく分かんない。 これからどうすればいいのか、何が正しいのか 」
上手く言葉に出来ない。
こんな曖昧なこと言われても、ダークだってきっと困っちゃうよね。
「あの耳飾り、してないんだ 」
ダークが私の耳元を見てそう呟いた。
「実は私、ピアス開けてなくて。 だけど持ち歩いてるよ 」
私は制服のポケットから白い袋を取り出すと、紐を広げて、中からピアスを出した。
「それ、付けてくれない? 」
「え、いいけど今? 」
「今 」
「さっき、ピアス開けてないって話したんだけど...... 」
ダークは私の手からピアスを取ると、右耳にそっと触れた。
痛みはなくて、でもピアスが通り抜けている感覚が伝わってきて、すごく変な感じがした。
「今、何したの? 穴空いたの? 」
耳たぶを触ると、確かにピアスは通っていた。
「これは付けてなきゃ意味がないんだ。役立つ時が、来ないほうがいいんだけど 」
ダークは、そんな意味の分からない事を言って私を見た。