闇のプリンス ~ヴァンパイアと純血の戦士~
「何の用だ 」
ルキアがラティラに問いかけると、その美しく不気味な赤い唇は、ゆっくりと動き出した。
「あんた達には迷惑かけないさ。 その子に用があるんだよ 」
そう私の方へと静かに頭を向けた。
心臓がバクバクと暴れ出す。
まるで幽霊のように、ラティラは体を動かさずにゆっくりと私へ近付いて来る。
恐怖で声も出ない。
「その子に指一本触れさせない 」
ルキアは、ラティラを遮るように私の前に立つと、一瞬ためらったようにこちらを見た。
「若輩がいい度胸だね。 私に勝てるとでも思うのかい? 」
「クククッ」と不敵に笑うと、長く真紅の色をした爪をペロリと舐めた。
な、なんなのアイツ......
その時、冷たかった空気が一変してとてつもない熱風が押し寄せてきた。
何、この油をものすごい高温で熱しているかのような熱さ!
すると突然、稲妻のような炎が上がった。
「危ないっ! 」
ルキアの背後から炎が燃え上がっていた。
けれど、それは体に火を灯し操っているようにも見えた。
「流石、火も使えるんだね 」
ラティラは楽しそうに口を緩めると、ルキアの頸部を瞬時に掴んだ。
「ルキアっ! 」
「お前、私が怖いか? 」
そう彼の首元に手を付けたまま、私の方へと顔を向けた。
「彼も私と同じ仲間よ? 」
ラティラがマントのような黒いコートを振り上げると、ルキアの体は後ろへと投げ飛ばされた。
仲間......