闇のプリンス ~ヴァンパイアと純血の戦士~
ラティラが焼き焦げた黒いマントを宙に脱ぎ捨てると、それは灰になりハラハラと舞い落ちた。
そして、そのベールの奥の素顔が露わになった瞬間、心臓がドクンと撃ち抜かれた。
「なんで……? 」
私の瞳に映り込んだのは、あの優希の姿だった。
「私は樹里を助けたのに、樹里は私を見捨てるの? 」
誰も見たことがない、殺人鬼ヴァンパイアの黒ベールの奥の顔が、優希だなんて、誰が想像しただろうか。
これは現実なのだろうか。
「ここまで来るのに長く我慢した 」
「…… 」
「ただ1人の味方として、信頼を得た 」
「やめて 」
私は耳を塞いで頭を伏せた。
優希と一緒に過ごした日々が、フラッシュバックのように脳裏に流れた。
そんな言葉聞きたくない。
「奴は変化の血術を使っている。 彼女は優希じゃない 」
ルキアがこちらへ駆け寄りってきて、何かを考えるようにそっと瞳を閉じた。
「さあ、おいで 」