闇のプリンス ~ヴァンパイアと純血の戦士~
偽りの顔
煙りが消えて気が付くと、そこにはもうあの女の姿はなかった。
「逃げたか 」
ルキアが近寄ってきて、「大丈夫か」と声を掛けられると同時に、私は無意識に彼へ抱きついていた。
そっと頭を撫でてくれた手は、暖かかった。
「すごく怖かった。 まだ夢の中にいるみたいで、みんながいてくれなかったら私…… 」
「怖い思いをさせて悪かった。 あいつは仲間じゃない。 でも、どうしてルーガルの敷居に現れたんだ 」
私の頭の上で、そうルキアが呟いた。
「こんなに強い気を感じたのは初めてだった。 あんたらの氏族とは関係ないのか? 」
ダークが荒い口調で言いながら、鋭い目付きでルキアを見た。
「あいつらはヴァンパイアの中でも特に恐ろしいアサマイト氏族に属している。 闇の暗殺者と言われている氏族だ 」
「ここはまだ油断出来ん。 みんなこっちへ来るんじゃ 」
そう言って魔女の姿になった〝三上先生〟は、奥にある小さな家へ近付いていった。
杖を振り、なにやら呪文を唱え、そこら周辺にバリアのような結界を張った。